ヒト子宮内膜間質細胞の脱落膜化におけるIGBP-1遺伝子発現を支配する遠位エンハンサーの同定と分子機構の解明(産科婦人科学講座)


The distal upstream region of insulin-like growth factor-binding protein-1 enhances its expression in endometrial stromal cells during decidualization.
Tamura I, Jozaki K, Sato S, Shirafuta Y, Shinagawa M, Maekawa R, Taketani T, Asada H, Tamura H, Sugino N.
J. Biol. Chem. 2018 Feb 16. pii: jbc.RA117.000234. doi: 10.1074/jbc.RA117.000234.

ヒト子宮内膜間質細胞の脱落膜化は、胚の着床や妊娠の成立に必要な生理現象である。Insulin-like growth factor-binding protein-1 (IGFBP-1)は脱落膜化により発現が誘導される代表的なマーカー遺伝子である。ChIPシークエンス解析により、IGFBP-1遺伝子の転写開始点より5kb上流のenhancer 領域に脱落膜化によりH3K27ac修飾が上昇する新たなenhancer領域が存在することを見出した。そこで、この領域を欠失した細胞株をCRISPR/Cas9によるゲノム編集により作成し、IGFBP-1発現変化を調べることでenhancer活性を証明した。さらに、enhancer領域のpromoterへのinteractionや結合する転写因子複合体 (FOXO1, C/EBPβ p300) を明らかにし、IGFBP-1発現に関する新たな転写調節機構を見出した。
 エピゲノムデータに基づく情報に加え、最新の技術であるゲノム編集法を応用することでenhancer領域を同定するという研究手法を用いた独創的、先駆的な研究である。本研究成果は、単に脱落膜化のメカニズムに迫るだけでなく、広く遺伝子発現調節機構や生命現象の解明、疾患の病態の理解にも貢献するものである。